届いた AI ファイルを Illustrator なしで開いて直せるエディターを作った

デザイナーから .ai でロゴが届いた。電話番号を1か所変えるだけなのに、パソコンに Illustrator が入っていない。そういうときのために、AI ファイルをブラウザでレイヤーのまま開き、直したあと AI で保存し直せるエディターを作った。

Ashton
ファイル形式

.ai は Illustrator の作業ファイルだ。ロゴやポスター、名刺のように、どれだけ大きくしてもくっきりしていなければならないものは、たいていこの形式でやり取りされる。中ではパス、文字、レイヤーがそれぞれ別々に残っているので、受け取った人がそのまま手を入れられる。困るのは、受け取った人が Illustrator を持っていないときだ。Windows には .ai を開く標準のアプリがなく、ほかのアプリで開けても、編集できない1枚の平らな画像としてしか表示されないことが多い。

Illustrator がないときの選択肢

方法よいところ難点
Illustrator を契約する本家のアプリなので、見た目がいちばん正確小さな修正1回のために毎月払うことになる
Illustrator の7日間無料体験今日から使える体験が終わると課金が始まる
無料のインストール型アプリ(Inkscape など)お金がかからない会社のパソコンはインストールが禁止されていることが多く、AI で保存し直せない
ブラウザのツールリンクを開くだけファイルをサーバーにアップロードするものや、AI を開けても保存できないものがある

今回作ったのは最後の行に入る。ただし、インストールもアカウントも要らず、ファイルをどこにもアップロードせず、直した結果を AI で保存し直せる。

EZPZ Vector エディター

Vector エディターを開いて、.ai をドロップするだけだ。オープンソースのベクターエディター VectorCraft(MIT・Apache-2.0 ライセンス、ArtCraft チーム)をもとに、見た目を明るくし、韓国語の画面を新しく加え、このサイトとつなぐ仕組みを足して作り直した。メニューとショートカットは Illustrator に合わせてある。

EZPZ の Vector エディターで、カフェのロゴの AI ファイル morning-cafe.ai を開いた画面。アートワークには「MORNING CAFE」とあり、右のレイヤーパネルには Price tag、Name、Logo、Background の4つのレイヤーが元の名前のまま並んでいる。
レイヤーに分かれた AI ファイルを開くと、レイヤーパネルにレイヤーが元の名前で表示される。

できること

  • レイヤーとサブレイヤー、グループ、クリッピングマスク、色とグラデーション、透明、アートボードが、作ったときのまま読み込まれる。
  • PDF 互換をオフにして保存した AI や、Illustrator 3〜8 の頃の古い AI も、編集用のデータを読んで開く。ほかのアプリでは「PDF コンテンツなしで保存された」という案内しか出ないファイルだ。
  • 「選択ツール」(V)、「ダイレクト選択ツール」(A)、「ペンツール」(P)、「文字ツール」(T)、「パスファインダー」、「シェイプ形成ツール」、「画像トレース」が使え、取り消しは何回でもできる。
  • 「ファイル › 別名で保存」(Ctrl+Shift+S)で AI(PDF 互換)、SVG、PDF として保存する。「ファイル › 書き出し › 形式を指定して書き出し」では PNG、JPG、WebP に書き出す。
  • AI のほか、SVG、EPS、PDF、DXF、EMF・WMF と Affinity のファイルも開ける。

直すときの流れ

AI ファイルをドロップする
レイヤーパネルで直すレイヤーを探す
文字・色・位置を直す
「別名で保存」で AI を受け取る
ファイルは最初から最後までブラウザの中にある

ファイルはどこへ行くのか

ブラウザはエディターそのものをダウンロードし、ファイルを開くのも、直すのも、保存するのもその中で行う。ファイルがサーバーへ送られる段階はない。公開前のロゴや取引先の案を扱うときには、ここがいちばん大きい。ブラウザの開発者ツールでネットワークタブを開いたままファイルを開いてみると、ファイルの大きさに近い通信が1つも出ていないことを自分の目で確かめられる。

まだできないこと

  • Illustrator の機能がすべてそろっているわけではない。VectorCraft 自身の見積もりでは、Illustrator の機能のおよそ 70% にあたる。ライブ効果、シンボル、パターンの塗り、ブラシは、編集できるオブジェクトではなく、描かれた見た目のまま読み込まれることがある。
  • ウェブページは、パソコンに入っているフォントを読めない。ファイルで使われているフォントがエディターにない場合は、似たフォントで代わりに描く。日本語は BIZ UDPゴシックで描く。
  • AI で保存すると、PDF 互換のファイルになる。Illustrator でも開けるが、Illustrator 独自の編集データは含まれない。
  • とても大きなファイルでは、ブラウザのタブが固まることがある。
  • 初めて開くときは、エディターのファイルを約 15 MB ダウンロードする。2回目からはすぐに開く。
  • パソコンとタブレットのブラウザで使える。スマートフォンは画面が狭すぎるので、使えないようにしてある。

Illustrator は Adobe の商標だ。このエディターは Adobe とは関係がなく、メニューとショートカットを Illustrator に合わせているだけだ。

AI ファイルを編集できるほかのツールのランキングと、AI ファイルが開かないときに確かめることも書いた。

Vector エディターを開く

よくある質問

Illustrator がなくても AI ファイルを開けますか?
はい。ブラウザで EZPZ の Vector エディターを開き、ファイルをドロップしてください。インストールもアカウントも要りません。
直したファイルを、AI のままデザイナーに返せますか?
「ファイル › 別名で保存」で AI を選ぶと、PDF 互換の .ai が手に入り、Illustrator でも開けます。効果が複雑なファイルは、送る前に一度開き直して確かめてください。
フォントが違って見えます。
ウェブのエディターはパソコンに入っているフォントを読めないため、ファイルで使われているフォントがないと、似たフォントに置き換えて描きます。フォントをそのまま保ちたいなら、送り主に文字を「アウトラインを作成」でアウトライン化したコピーを頼んでください。
ファイルはサーバーにアップロードされますか?
いいえ。開いてから保存するまで、すべてブラウザの中で処理され、ファイルはお使いの端末に残ります。
スマートフォンでも使えますか?
いいえ。これだけパネルが多いので、スマートフォンでは使えないようにしています。パソコンかタブレットのブラウザで開いてください。

最終更新 2026年10月9日